ChatGPTに、他の人には見せたくない下書き前の考えごとや、取引先の名前を伏せきれない相談を投げたくなったとき、「この会話は履歴に残るのか」「メモリに覚えられてしまうのか」「モデルの学習に使われるのか」が気になって手が止まる人は多いはずです。そうした場面のために用意されているのが、一時チャット(Temporary chat)です。
結論から書くと、OpenAIの公式ヘルプは、一時チャットについて「チャット履歴に残らず、一時チャットのままである間はOpenAIのモデルの改善に使われない」と説明しています(OpenAI Help Center「Temporary chat in ChatGPT」2026年10月4日取得)。ただし、同じページには、安全のために最大30日間コピーが保持されることがあること、保存すると通常のチャットに変わることなど、読み飛ばすと誤解しやすい条件も書かれています。この記事では、その条件を一つずつ分けて整理します。
扱うのはChatGPTアプリ上の一時チャットです。履歴やメモリそのものの仕組みを先に知りたい場合は、保存されたメモリと履歴参照の違いを扱った記事を先に読むと、後半の比較表が理解しやすくなります。
一時チャットとは何か|公式が示す基本の挙動
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ChatGPTの一時チャットとは、会話を履歴に残さず、一時チャットのままである間はOpenAIのモデル改善にも使わないという前提で始められる会話モードで、あとから通常のチャットとして保存することもできる機能です。
公式ヘルプ「Temporary chat in ChatGPT」の冒頭は、一時チャットの性質を次のように要約しています。履歴には残らない、一時チャットのままである間はモデル改善に使われない、既存のメモリ・カスタム指示・プラグインを使って回答を個別化することもできる、会話を始める前に個別化をオフにできる、あとから通常のチャットとして保存できる、という内容です(Temporary chat in ChatGPT)。
この説明から、一時チャットには「履歴」「個別化」「学習への利用」「保存」という四つの軸があることが分かります。通常のチャットでは、この四つはすべてアカウントの設定に従います。一時チャットは、そのうち履歴と学習について、通常とは違う扱いを受けます。一方で、個別化については「使う」「使わない」を会話の開始前に選べる仕組みで、ここが一時チャットで最も誤解されやすい点です。
よくある誤解は二つあります。ひとつ目は「一時チャットなら何も残らない」という理解です。公式ヘルプは、安全のために最大30日間コピーが保持される可能性を明記しています。ふたつ目は「一時チャットなら、これまでの自分の情報はまったく使われない」という理解です。こちらは、個別化ありを選んだ場合には既存のメモリやカスタム指示が使われ得るため、当てはまりません。以降の章で、この二つの誤解を順に解いていきます。
一時チャットの始め方|手順と最初に選ぶこと
一時チャットの始め方とは、新しいチャットを開いて「Temporary」を選び、最初のメッセージを送る前に「Personalized」か「Unpersonalized」を選んでから入力するという一連の手順のことです。
公式ヘルプが示す手順は短く、新しいチャットを開く、Temporaryを選ぶ、最初のメッセージを送る前にPersonalizedかUnpersonalizedを選ぶ、メッセージを入力する、の順です(Temporary chat in ChatGPT)。難しい操作はありませんが、三つ目の「最初のメッセージの前に選ぶ」という順序に意味があります。後述するとおり、個別化の選択は会話が始まってから変えられないためです。
macOSアプリについては、別のヘルプページに「画面上部のモデル名をクリックして、Temporary Chatのトグルを選ぶ」という操作が書かれています(Temporary Chats on the ChatGPT macOS app)。ただし、このページは一時チャット全般のページとは書かれた時期が異なるとみられ、表現がそろっていない部分があります。この点は専用の章で扱います。
実際に使うときの流れを、よくある相談を例に整理します。以下は仮の例です。
- 仮の例:取引先との交渉メールの言い回しを相談したい。固有名詞は伏せるが、状況の説明は具体的に書きたい。
- 手順:新しいチャットを開き、Temporaryを選ぶ。過去の自分の文体を参照されたくないので、Unpersonalizedを選ぶ。
- 結果の扱い:相談が終わったら、そのまま閉じる。あとで同じ文面を見返したい場合だけ、保存する。
このように、始める前に「あとで戻る可能性があるか」「過去の情報を参照させたいか」の二点を決めておくと、操作に迷いません。保存するかどうかは、離れる前に決めておくと安心です。
個別化あり・なしの選び方|メモリとカスタム指示との関係
一時チャットの個別化とは、会話の開始前にPersonalizedとUnpersonalizedから選ぶ設定のことで、Personalizedは既存のメモリ・カスタム指示・プラグインを使い、Unpersonalizedはそれらを使いません。
公式ヘルプは、二つの選択肢を次のように定義しています。Unpersonalizedは、メモリ、カスタム指示、プラグインを使いません。Personalizedは、既存のメモリ、カスタム指示、プラグインを使えます。どちらを選んでも、一時チャットのままである間は、メモリの作成も更新も行われません。そして、個別化の選択は、会話が始まってから変更できません(Temporary chat in ChatGPT)。
この仕様から読み取れるのは、「読む」と「書く」が別だということです。Personalizedを選ぶと、すでに保存されているメモリやカスタム指示を読んで回答に活かせますが、この会話の内容が新しいメモリとして保存されることはありません。使い道を分けるなら、次のようになります。
| 選択 | 既存のメモリ・カスタム指示・プラグイン | この会話からのメモリ作成・更新 | 向いている場面の考え方 |
|---|---|---|---|
| Unpersonalized | 使わない | 行われない | 過去の情報に引っ張られず、白紙の状態で相談したいとき |
| Personalized | 使える | 行われない | 普段の設定の文体や前提は活かしつつ、この会話は記憶に残したくないとき |
メモリとカスタム指示の違い自体を整理したい場合は、常に効く指示の設定を扱った記事と、先ほどのメモリの記事が参考になります。一時チャットで個別化ありを選ぶということは、そこで設定したものを会話に持ち込むことだと考えると分かりやすくなります。
もう一点、公式ヘルプには注意書きがあります。個別の一時チャットでは、アカウントとワークスペースの制限が、個別化の選択より優先されます。つまり、組織のワークスペースでメモリが無効になっているなら、Personalizedを選んでもメモリは使われないということです(Temporary chat in ChatGPT)。仕事用のアカウントで一時チャットを使うときは、自分の選択だけでなく、組織側の設定も効いていることを意識しておく必要があります。
さらに、個別化をオフにしても、安全に関する仕組みまで止まるわけではない点が公式に書かれています。ChatGPTは、限定的な安全上・セキュリティ上の目的で、過去の会話の情報を使うことがあるとされ、メモリや個別化の機能をオフにしても、まれで深刻なおそれのある場面で、限定的な安全関連の文脈を使ってより慎重に応答する仕組みは無効にならないと説明されています(Temporary chat in ChatGPT)。これは通常の利用で意識する場面は少ないものの、「完全に白紙」と言い切れない理由として覚えておく価値があります。
履歴と保存|あとで戻りたいときの扱い
一時チャットの保存とは、履歴に残らない会話をあとから戻れるよう通常のチャットに変換する操作のことで、保存した時点から、その会話はアカウントの個別化設定とモデル改善の設定に従うようになります。
公式ヘルプによれば、あとで戻りたい場合は、一時チャットを履歴に保存できます。保存すると通常のチャットに変換され、これは個別化なしで始めた場合も同じです。その時点から、保存されたチャットはアカウントの個別化とモデル改善の設定に従い、メモリがオンであれば、保存した会話が今後の回答の個別化に使われる可能性があります。(Temporary chat in ChatGPT)。
ここで重要なのは、保存が「一方向の変換」として説明されている点です。個別化なしで始めた会話であっても、保存すれば通常のチャットとして扱われるため、個別化なしのまま保存済みとして残るわけではありません。保存を押す前に、「この内容は、通常のチャットとして残してよい内容か」を一度確認する習慣が役に立ちます。
保存しなかった場合については、履歴に表示されず、画面を離れたあとは履歴から開き直せないと書かれています。戻る手段がなくなるため、あとで使いたい文面や手順が含まれているなら、離れる前にコピーするか、保存するかを決めてください。
アップロードしたファイルがある場合の記述もあります。一時チャットにアップロードしたファイルがあり、そのチャットを保存すると、対象になるファイルはLibraryにも保存されることがあります。ただし、提供状況と保存容量の上限に左右されます(Temporary chat in ChatGPT)。保存を押すという一つの操作が、チャットだけでなくファイルの扱いにも影響し得るということです。
モデル学習への影響|一時チャットとデータコントロールの関係
一時チャットとモデル学習の関係とは、一時チャットのままである間は個別化の有無にかかわらずモデル改善に使われず、保存した場合はアカウントのモデル改善設定が適用されるという切り替わりのことです。
公式ヘルプは、一時チャットについて「一時チャットのままである間は、個別化を選んだかどうかにかかわらず、OpenAIのモデルの改善に使われない。保存した場合は、モデル改善の設定が適用される」と説明しています(Temporary chat in ChatGPT)。つまり、Personalizedを選んだからといって、その会話が学習に回るわけではありません。個別化と学習は別の軸です。
この「別の軸」という点は、データコントロールのヘルプにも明記されています。メモリはChatGPTが回答を個別化する方法を制御し、モデル学習の制御は対象となる内容をOpenAIのモデル改善に使えるかどうかを決める、そして両者は別々の設定である、という説明です(Data controls in ChatGPT)。
通常のチャットで学習への利用を避けたい場合の設定も、同じヘルプに載っています。設定を開き、データコントロールを選ぶと、アカウントで使える項目を管理できます。「Improve the model for everyone」をオフにすると、新しい会話は学習に使われなくなりますが、そうした会話も履歴には残り得ます。また、この設定をオフにしても、保存済みのチャットが削除されたり、非表示になったりすることはありません(Data controls in ChatGPT)。
この二つの違いを使い分けの観点で並べると、次のようになります。
| 知りたいこと | 一時チャットで決まること | データコントロールの設定で決まること |
|---|---|---|
| 履歴に表示されるか | 保存しない限り表示されない | 学習設定をオフにしても、通常のチャットは履歴に残り得る |
| 学習に使われるか | 一時チャットのままである間は使われない | 通常のチャットには、Improve the model for everyoneの設定が適用される |
| メモリが作られるか | 一時チャットのままである間は作成も更新もされない | メモリは別の設定で管理される |
見落としやすい例外が一つあります。データコントロールのヘルプによれば、学習への利用をオフにしていても、回答に対して高評価や低評価のようなフィードバックを送ると、そのフィードバックに関連する会話全体がモデルの学習に使われる可能性があります(Data controls in ChatGPT)。機密性の高い内容を扱った会話で、うっかり評価ボタンを押さないよう気をつけてください。なお、一時チャットとフィードバックの組み合わせについては、取得した公式ページに記述がなかったため、この記事では扱いを断定しません。
保存期間の考え方|30日の意味と通常チャットの削除との違い
一時チャットの保存期間とは、履歴に残らない会話について、OpenAIが安全上の目的で最大30日間コピーを保持することがあるという公式の説明のことで、通常のチャットを削除したときの扱いとは別の仕組みです。
公式ヘルプは、一時チャットについて「OpenAIは安全上の目的で、一時チャットのコピーを最大30日間保持することがある」と述べています。通常のチャットとして保存した場合は、保存されたチャットの保持ルールに従います(Temporary chat in ChatGPT)。保持に関する別のヘルプでも、一時チャットは保存しない限り履歴に表示されず、OpenAIは安全上の目的で最大30日間コピーを保持することがある、と同じ内容が書かれています(Chat and file retention in ChatGPT)。
この「最大30日間」は、「履歴に表示されない」とは別の話です。履歴に表示されないことは、ユーザー側の見え方の話であり、30日間の保持は、OpenAI側が安全のために一定期間コピーを持つ可能性の話です。両者を混同して「一時チャットなら、サーバー上にも何も残らない」と理解すると、公式の説明とずれてしまいます。
通常のチャットを削除した場合の扱いも、同じ保持のヘルプにあります。通常のチャットとアーカイブしたチャットは、削除するか、適用されるワークスペースの保持ポリシーで消されるまでアカウントに残ります。アーカイブしても保持期間は変わりません。保存されたチャットを削除すると、アカウントの表示からはすぐに消え、OpenAIはシステムからの完全な削除を30日以内に予定します。ただし、すでに匿名化されてアカウントとの関連が切れている場合や、セキュリティ上・法令上の義務で長く保持する必要がある場合は例外です。削除したチャットは、ChatGPTでもOpenAIサポートでも復元できないと書かれています(Chat and file retention in ChatGPT)。
数字だけを見ると、どちらにも「30日」が出てくるため紛らわしいのですが、意味は違います。一時チャットの30日は「安全上の目的で、コピーが最大この期間保持されることがある」という上限の話で、通常チャットの30日は「削除後に、完全削除が予定される期間」の話です。同じ数字でも、何についての数字なのかを分けて読みましょう。
通常のチャットとの比較|履歴・メモリ・学習・保持
一時チャットと通常のチャットの違いとは、履歴への残り方、戻れるかどうか、個別化の決まり方、メモリの作成、モデル学習、保持の仕組みという複数の軸で、公式ヘルプが比較表にまとめている内容のことです。
公式ヘルプには、一時チャットと通常のチャットを比べた表が載っています。その内容を、軸ごとに整理し直すと次のとおりです(Temporary chat in ChatGPT)。
| 比べる軸 | 一時チャット | 通常のチャット |
|---|---|---|
| 履歴 | 通常のチャットとして保存しない限り履歴に残らない | 削除するか、ワークスペースの保持ポリシーで消されるまで履歴に残る |
| あとで戻る方法 | 通常のチャットとして保存すれば、履歴から戻れる | チャット履歴や検索から開き直せる |
| 個別化 | 会話の開始前にPersonalizedかUnpersonalizedを選ぶ | アカウントの個別化設定に従う |
| メモリ | 個別化ありなら既存のメモリを使える。一時チャットのままではメモリの作成も更新もしない | メモリが有効なら、使うことも作ることもできる |
| モデル学習 | 一時チャットのままでは使われない。保存するとモデル改善の設定に従う | アカウントのモデル改善設定とワークスペースのポリシーに従う |
| 保持 | 安全上の目的で、コピーが最大30日間保持されることがある | 保存されたチャットや組織の保持ルールに従う |
| 向いている用途 | 履歴に保存したくない会話。残したい場合だけ保存する | 残して、あとで戻りたい会話 |
この表で最も実務に効くのは「履歴」と「あとで戻る方法」の行です。一時チャットは、使い終わった時点で自分の手元にも残らなくなるため、「読み返す価値のある会話」では不向きです。逆に、通常のチャットは、読み返せる利点の裏返しとして、不要になった会話を自分で削除する手間が発生します。どちらが優れているかではなく、その会話に残す価値があるかで決めるのが、公式ヘルプの比較表の読み方です。
ファイル・GPTs・アクションを使うときの注意
一時チャットでのファイルとGPTsの扱いとは、アップロードしたファイルが保存時にLibraryへ入る可能性があることと、GPTsで使うアクションが第三者へ送るデータは一時チャットの保持ルールの外にあることの二点を指します。
公式ヘルプは、一時チャットをGPTsと一緒に使えると説明しています。ただし、GPTがアクションを使う場合、アクションを通じて第三者に送られたデータは、その受け手のプライバシーポリシーに従います。受け手は、30日を超えてそのデータを保持することがあり、他の目的で使うこともあります(Temporary chat in ChatGPT)。
これは重要な注意点です。一時チャットで「学習に使われない」「30日で保持が終わる」という扱いになるのは、OpenAIが管理する範囲の話であり、外部サービスと連携するアクションが受け取ったデータには、その外部サービスのルールが適用されます。外部サービスと連携するGPTを一時チャットで使うときは、そのGPTが何を外部に送るのかを事前に確認してください。GPTsの作り方と、アクション設定の基本はカスタムGPTの作成手順をまとめた記事で説明しています。
ファイルについては、保持のヘルプにも関連する記述があります。Libraryが利用できる場合、ChatGPTにアップロードしたファイルや作成したファイルは、会話とは別に保存できます。チャットを削除しても、Libraryに保存されたままのファイルは削除されないため、保存したLibraryのコピーも消したい場合は、Libraryから削除する必要があります(Chat and file retention in ChatGPT)。
プロジェクトやカスタムGPTにファイルを置いた場合の保持は、一時チャットとは別の仕組みです。同じヘルプによれば、カスタムGPTにナレッジとしてアップロードしたファイルはGPTが削除されるまで、プロジェクトに追加したファイルはプロジェクトまたはファイルが削除されるまで(あるいはワークスペースの保持ポリシーで消されるまで)保持されます(Chat and file retention in ChatGPT)。資料をまとめて扱いたい場合の整理は、資料と指示をまとめて管理する機能の記事が参考になります。
macOSアプリのヘルプと一時チャット全般のヘルプの読み合わせ方
macOSアプリの一時チャットの説明とは、アプリ専用のヘルプページに書かれた一時チャットの挙動のことで、一時チャット全般を説明する「Temporary chat in ChatGPT」とは別の時期に書かれたとみられ、表現がそろっていない部分があります。
公式ヘルプには、一時チャットを説明するページが複数あり、書かれた時期が異なるとみられます。macOSアプリ向けのページは、一時チャットを「白紙の状態で始まる会話」と説明し、ChatGPTはメモリを覚えておらず、過去の会話も認識しない、履歴には表示されず、モデルの改善にも使われない、カスタム指示が設定されている場合はそれに従う、と書いています(Temporary Chats on the ChatGPT macOS app)。
一方、一時チャット全般を説明するページは、Personalizedではメモリとカスタム指示とプラグインを使え、Unpersonalizedではそれらを使わないと書いています(Temporary chat in ChatGPT)。二つのページを並べると、メモリやカスタム指示の扱いについて、説明の書き方や前提がそろっていないように読めます。
取得した公式ページだけでは、どちらの記述がいまのmacOSアプリの画面に当てはまるのかを断定できません。macOSアプリのページには「一部のユーザーに公開を始めた」という文言も残っており、書かれた時期が違うとみられますが、あくまで推測です。両方のページへのリンクを示すので、読み比べてください。実務での対処は次のとおりです。
- メモリやカスタム指示を使うかどうかが重要な場面では、アプリの画面上に表示される選択肢を、始める前に自分の目で確認する。
- 画面で選べる場合は、一時チャット全般のページの記述を基準にしつつ、アプリ固有のページも合わせて読む。
- 両方のページに共通して書かれている部分、つまり「履歴に残らない」「モデル改善に使われない(一時チャットのままの間)」だけを前提にして使う。
公式ページ同士で記述が異なる場合に、片方だけを根拠にして断定しないことは、ChatGPTの設定を扱うときの基本姿勢です。画面の表示と各ヘルプページの記述を突き合わせる習慣をつけてください。
組織のアカウントで使うとき|ワークスペースの制限とCompliance API
組織のアカウントでの一時チャットとは、個人の選択だけでなく、ワークスペースの制限や保持ポリシーも効く環境での利用のことで、対象となるEnterpriseでは管理者がCompliance API経由で一時チャットを確認できる場合があります。
仕事で使うアカウントでは、前の章までの説明に加えて、組織側の設定が重なります。公式ヘルプは、個別の一時チャットでは、アカウントとワークスペースの制限が個別化の選択より優先されると書いています(Temporary chat in ChatGPT)。つまり、個人の画面でPersonalizedを選べても、組織が制限していれば、その制限が優先されます。
管理者の見え方については、公式ヘルプに特筆すべき記述があります。対象となるEnterpriseの顧客については、ワークスペースが別の保持期間を設定している場合でも、一時チャットは30日間Compliance APIで利用できると書かれています(Temporary chat in ChatGPT)。つまり、組織のEnterprise環境では、「一時チャットだから、組織の管理側からは一切見えない」とは言えません。社内の機密情報や顧客情報を扱う前に、自社のルールと管理者の設定を確認しておくことが大切です。
モデル学習の既定値も、プランの種類で異なります。データコントロールのヘルプによれば、ChatGPT Business、Enterprise、Edu、ChatGPT for Healthcareのワークスペースの内容は、既定ではOpenAIのモデル学習に使われません。管理されたワークスペースには、組織単位の保持、メモリ、コンプライアンス、アクセスの設定もあり得るとされています(Data controls in ChatGPT)。プランごとの違いを全体で確認したい場合は、各プランの料金と機能の比較記事が出発点になります。
使いどころの整理|場面別に一時チャットを選ぶ考え方
一時チャットの使いどころとは、会話を残す価値があるか、過去の設定を持ち込みたいか、外部サービスとの連携があるかという三つの問いに答えて、通常のチャットと使い分ける判断の方法のことです。
ここまでの公式の記述を、判断の問いにまとめ直します。第一に、その会話をあとで読み返す価値があるか。ある場合は通常のチャットか、保存を前提にした一時チャットを選びます。第二に、過去のメモリやカスタム指示を会話に持ち込みたいか。持ち込みたいならPersonalized、白紙で相談したいならUnpersonalizedを選びます。第三に、外部サービスと連携するGPTやアクションを使うか。使う場合は、一時チャットの保持ルールが及ばない範囲があることを前提にします。
次の表は、仮の例として場面ごとの選び方を整理したものです。実際の判断は、組織のルールとアカウントの設定を優先してください。
| 仮の場面 | 選び方の一例 | 理由 |
|---|---|---|
| 言い回しの相談だけで、あとで読み返す予定がない | 一時チャットのUnpersonalized | 履歴に残さず、過去の情報にも影響されずに済む |
| いつもの文体の指示を活かしつつ、会話は記憶に残したくない | 一時チャットのPersonalized | 既存のカスタム指示は使え、この会話からはメモリが作られない |
| 相談の結果を、あとで資料づくりに使いたい | 通常のチャット、または一時チャットで始めて保存 | 履歴から戻れる。保存後は通常のチャットの設定に従う |
| 外部サービスにつながるGPTで作業する | 通常のチャットでも一時チャットでも、アクションの送信先の規約を確認 | アクション経由のデータは受け手のプライバシーポリシーに従う |
仮の例として、ひとつの相談を最初から最後まで追ってみます。ある人が、取引先に送る断りのメールの言い回しを相談したいとします。内容は固有名詞を伏せても、状況の説明は具体的になります。そこで一時チャットを開き、いつもの文体指示は不要なのでUnpersonalizedを選び、文面案を出してもらいます。納得のいく文面が決まったら、コピーして自分のメールソフトに貼り、一時チャットはそのまま閉じます。数日後に同じ取引先とのやり取りが続くなら、あらためて新しい一時チャットを始めます。この流れでは、会話そのものを残す必要がないので、保存の操作は一度も行いません。
ここまでの内容は、一時チャットが「履歴を残さないための仕組み」であって、「情報の機密性を保証する仕組み」ではない、という点に集約されます。保持やアクション、組織の管理といった別の要素が重なるため、本当に外に出せない情報は、一時チャットでも入力しないという線引きが現実的です。プロンプトの書き方そのものを見直したい場合は伝わる指示の書き方をまとめた記事、仕事での活用全般は業務での活用方法を扱った記事が参考になります。
よくある質問(FAQ)
- Q1. 一時チャットは、本当に何も残らないのですか。
- 履歴には残りませんが、公式ヘルプは、OpenAIが安全上の目的で最大30日間コピーを保持することがあると説明しています(Temporary chat in ChatGPT)。履歴に表示されないことと、保持されないことは別の話です。
- Q2. 個別化ありを選ぶと、会話が学習に使われますか。
- 公式ヘルプは、一時チャットのままである間は、個別化を選んだかどうかにかかわらず、モデル改善に使われないと説明しています。保存した場合は、アカウントのモデル改善設定が適用されます(Temporary chat in ChatGPT)。
- Q3. 一時チャットを始めたあとで、個別化のあり・なしを変えられますか。
- 変えられません。公式ヘルプは、個別化の選択は会話が始まってから変更できないと書いています。変えたいときは、新しい一時チャットを始め直します(Temporary chat in ChatGPT)。
- Q4. 保存した一時チャットは、そのまま個別化なしで残りますか。
- 残りません。保存すると通常のチャットに変換され、個別化なしで始めた場合も、以降はアカウントの個別化とモデル改善の設定に従います。メモリがオンなら、保存した会話が今後の回答の個別化に使われる可能性があります(Temporary chat in ChatGPT)。
- Q5. 学習への利用をオフにすると、チャット履歴は消えますか。
- 消えません。Improve the model for everyoneをオフにしても、保存済みのチャットは削除も非表示もされません。履歴を消したい場合は、チャットやアカウントを別に削除します(Data controls in ChatGPT)。
- Q6. 外部サービスにつながるGPTを一時チャットで使っても大丈夫ですか。
- 一時チャットはGPTsと一緒に使えますが、アクションを通じて第三者に送られたデータは、受け手のプライバシーポリシーに従い、30日を超えて保持される場合もあります。使う前に、そのGPTが外部に何を送るのかを確認してください(Temporary chat in ChatGPT)。
- Q7. 会社のアカウントでも、一時チャットなら管理者から見えませんか。
- そうとは言えません。対象となるEnterpriseの顧客には、一時チャットが30日間Compliance APIで利用できると公式ヘルプに書かれています。個別化の選択よりも、アカウントとワークスペースの制限が優先される点にも注意してください(Temporary chat in ChatGPT)。
まとめ|一時チャットは四つの軸に分けて使う
ChatGPTの一時チャットは、履歴、個別化、モデル学習、保存という四つの軸に分けて理解すると、使いどころが明確になります。履歴には保存しない限り残らず、一時チャットのままである間はモデル改善に使われませんが、安全上の目的で最大30日間コピーが保持されることがあります。個別化は会話の開始前にPersonalizedかUnpersonalizedを選び、始めたあとは変えられません。保存すると通常のチャットに変わり、以降はアカウントの設定に従います。
外部サービスにつながるアクション、組織のワークスペースの制限、Enterpriseでのアクセス、macOSアプリのヘルプとの読み合わせなど、一時チャットの外側にある条件も、判断には欠かせません。公式ヘルプは更新されることがあるため、重要な運用を決める前に、記事内のリンク先で現行の記述を見直してください。ChatGPTの基本から押さえ直したい場合は基本的な使い方をまとめた記事、モデルの違いはモデルごとの得意不得意を整理した記事、定期的な作業の自動化は決まった時刻に任せる機能の記事が出発点になります。
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